音楽製作家と音楽演奏家の違い


 「音楽製作家と演奏家の違い?そんなものは微々たるものでしょ?」

 おそらく音楽に携わっていない方はそうお感じになると思いますが、実際には、両者の仕事の内容はかなり異なります。

 音楽制作家には、作曲家、即興演奏家などの職種があり、音楽演奏家には、クラシック演奏家、カバー曲や他者によって書かれた楽曲の演奏者などが含まれます。アレンジャーやジャズの即興演奏家は、ちょうどこの中間くらいでしょうか。

 音楽制作家と音楽演奏家の違いは、ガーデニングの専門家と切り花のフラワーアレンジメント(生花など)の専門家の違いに似ています。花を育てるガーデニングの仕事は農業そのものですから、ほとんどの時間とエネルギーは、花自体ではなく土、気候、生育条件などの環境の調整の仕事に向けられます。そのため、地味で泥臭い作業の連続で、そこでは成果がすぐに形に見えない努力が要求され、徒労に終わる努力も数知れず…。しかし、根気よく続けることで肥沃なガーデンを作ることができれば、あとはどんな種や球根を植えても花は育ち、いつもたくさんの花たちに囲まれて暮らすことができます。ただ、その花を直接ガーデンまで見に来てくれるお客は稀です。その稀なお客が、花の買い付けに来るフラワーアレンジメントの専門家です。彼らは、花が咲き誇るガーデンから気に入った花を切り取り、それを花のない場所、例えば都会の建物の中などに持ち込んで、そこで花と器、それを取り巻く空間との調和を考慮して花の美しさを演出します。彼らの仕事場は、往々にして泥臭さとは無縁の文化的でお洒落な環境で、自分の仕事を大勢の方に見てもらうことができ、仕事のほとんどの時間とエネルギーをお花自体の美しさに向けることができます。
 
 このように考えると、前者は農民的、後者は芸能人的といえます。農民は百姓とも言われ、文字通り100の多岐にわたる仕事をこなす必要があります。実際に農民もやってる立場から多少の自尊心も込めて「農業は脳業である」と吹聴しております。もし、お花自体の美しさを扱うことに集中し、お客の反応を身近に感じられる環境で活動したいのであれば、フラワーアレンジメントが向いているでしょう。逆に、地味な作業が好きで、生命を育てるという神秘的なプロセスに興味があるのなら、ガーデニングが向いています。

 今の自分の音楽家としての立ち位置は、お花畑のガーデニングが本業ですが、たまに切り花を売りに街に向かって軽トラックを走らせるおっさん、といったところでしょうか。お花を上手に育て、育ったお花たちに囲まれてられるということ自体が何よりの喜びなので、営業もあまりしない。ご時世柄もあり、相変わらずお花は売れてませんが、まあ、それでも幸せかな。

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