(1)新型コロナウイルス感染症リスクとワクチン接種に伴うリスクの比較


(前書き)
 カリフォルニアでは、新型コロナワクチン接種の判断が、音楽演奏家としての仕事に影響する事態になっています。実際に、ワクチン未接種の音楽家には演奏をさせないという差別を平然と行うコンサート会場や企画会社が出てきました。ワクチン接種の有無が、30年以上かけて築いてきた音楽演奏家としてのキャリアに影響を与えるという予想外の展開となり、この重大な決定をするために、50歳の最初の1週間を費やして情報収集と分析を行いました。幸い東大医学部の保健学科で看護学、保健学を学び看護師としての臨床経験もあるというアドバンテージはあったものの、専門性の高い感染症とワクチンに関する情報収集と分析には、随分と苦労をしております。皆さんも、ワクチン接種に関してはお悩みの方が多いと思いますので、集めたデータを共有し、皆さんと一緒に考える機会にしたいと思います。ワクチン接種に関してすでに決断をされている方は、スルーしてください。

 現時点の個人的な判断を先に申すと、専門家の端くれとして様々な情報を検討した結果、古佐小基史という個人の予防手段としても公衆衛生の観点からも、今回のワクチン大規模接種の医学的妥当性を十分に納得できる段階には至っておらず、たとえ音楽活動の制約という社会制裁を受けることになったとしても、社会的プレッシャーを理由に新型コロナワクチンを接種することはいたしません。しかし、引き続き新型コロナに関してはデータ収集を続け、現時点での判断に固執することなく、できるかぎり公正な視点から考え続けるつもりでおります。

 まず、自分は反ワクチン主義者ではありません。子供時代、海外渡航時、アメリカでの永住権取得時に要求されるワクチンは、全て接種してきました。おそらく、その延長線上という感覚で新型コロナワクチンを何の抵抗もなく接種される方が多いと思いますが、このワクチンは、通常の治験期間と承認プロセスを大幅に省略した形で特例承認された薬物であることから、これまでになく慎重な態度で接種の必要性を検討しています。現在日本で接種の始まっているファイザーの「コロナウイルス装飾ウリジンRNAワクチン・コミナティ筋注」は、開発国の米国のFDA (food and drug administration) 食品医薬品局から緊急使用の特別認可がされている段階で、正式認可には至っていない新薬です。しかも、RNAワクチンは実用化されて広汎に使用されたことのない新しいタイプの薬物ですから、過去のデータの積み上げが乏しく、特に長期での予測できない薬効や副反応が出る可能性が指摘されています。

 しかし、なぜいまこのような特殊なワクチンの大規模な接種が、世界中で急速に進められているのか?それは、新型コロナウイルスCOVID-19によるパンデミックが人類に未曾有の危機を与えているにもかかわらず、これまで打開策が見当たらず、万策尽きてこの新しいワクチンの大規模接種という最後の手段にすがるしかない、という認識が広がっているからです。実は、この認識の是非に関しても、様々な科学的な見解があるのですが、現在のところ、この認識を各国政府とメディアが支持し、アメリカではラジオの政府広報でも「みんなでワクチンを打って、コロナパンデミックを乗り越えよう!」と呼びかけ、カリフォルニア知事は、120億円相当の予算をつけて「宝くじ付きワクチン」によってワクチン接種率を上げようとしています。

 「政府がやっていることなんだから、安全に決まっている」という主張も耳にしますが、それだったら、新薬の認可に関するややこしいルールなど最初から必要ないということになってしまいます。政府であれ最先端の研究所であれ、所詮は人間の集まりですから、魔法を使えるわけではありません。人体の働きには、最新の科学的英知を集結しても分からないことの方が圧倒的に多いため、新薬の開発には十分に時間をかけた地道な実証実験が必要になります。そのように治験を重ねて正式に認可された薬でも、臨床で使われた後に予測できなかった危険性が明るみになる場合すらあります。

 自分は、健康を害して苦しんでいた30代半ばに、医療の本道は病治しではなく健康増進と能力開発にあると考え始め、その後トータルヘルス研究会(三重県)に参加し、第27回日本環境医学会学術集会でも発表をするなど研究者としての活動も行っています。自宅ファームでは、無農薬有機農業、自然農法的な家畜の飼育、ハーブの栽培を行い、健康的な食事、睡眠、運動習慣の構築、身体操作法、民間療法の習得、それに生きがいと満足感を感じられる日々の活動など、意識的かつ戦略的な疾病予防と健康増進活動を実践してきました。そのおかげで50歳となった現在の方が30代よりも遥かに健康感、体力、生産性、幸福感ともに向上し、ここ7年ほどは日常活動に支障が出るような健康問題(軽度の風邪など)も発生せず、10年以上医療のお世話にならずに生きてきました。

 ここで新型コロナワクチンという予防手段を用いるのは、言うなれば、有機農法で時間をかけて作りあげた畑に、開発実験段階の強力な農薬を試験的に使ってみるという唐突さに匹敵します。これまで長年にわたって成果をもたらしてきた方法論を覆し、非常手段を用いるには、ワクチンによる効果がもたらす利益とこれまで築いてきた健康が破壊されるかもしれないリスクの比較検討をしなくてはなりません。このように、信念に伴う過去の健康行動の成功体験が背景にある場合の判断過程では、入手可能な科学的データの分析から示唆される結論のみから白黒をはっきりつけることは難しいと感じています。これは、もともとワクチンという予防手段自体を否定する立場の方や、宗教的理由でワクチン接種を拒否する方にも当てはまります。人生には、データの収集と分析だけでは最終結論を出せない問題がたくさんあるため、人間は、常に精神論的な判断と科学的判断を並列的に用いており、そのバランスは各人の生き方や価値観を大きく反映します。新型コロナワクチンに関する問題も、そういう複雑な問題の1つであると考えます。

 個人としてのワクチン接種に関する決断をするにあたり、また、家族との間で適切な意思決定を共有するために、以下の項目での情報収集、分析、考察を試みました。アメリカのデータでも分析も進めていますが、人種によるコロナウイルス感染の傾向にも特徴が見られることから、まずは日本にいる年老いた両親や友人との情報共有も念頭に、主に日本のデータを用いて以下の項目について考察しました。これから数回に分けてこれらの項目に関する投稿をアップするつもりでおります。

(1)新型コロナウイルス感染症リスクと新型コロナワクチン接種に伴うリスクの比較
(2)新型コロナワクチンの効果について
(3)新型コロナウイルス感染対策としてのワクチンの位置づけ
(4)社会的な圧力によりワクチンを接種を迫られることの意味


(1)新型コロナウイルス感染リスクと新型コロナワクチン接種に伴うリスクの比較

 新型コロナウイルス感染による健康リスクを、その解決策であるワクチン接種による健康リスクが上回ってしまったら、本末転倒で全く意味をなさないということになりますので、まずは、現時点で明らかにされているデータからこの2つのリスクを比較します。

 ウイルス感染のリスクに関しては、厚生省の「新型コロナウイルスの”いま”に関する11の知識」という2021年4月付の資料にわかりやすくまとめてくれています。
https://www.mhlw.go.jp/content/000749530.pdf

 



 ワクチン接種のリスクについては、ファイザーのワクチン「コミナティ筋注」の解説に明記されています。
https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000778307.pdf

 





「本剤は、本邦で特例承認されたものであり、承認時において長期安定性等に係る情報は限られているため、製造販売後も引き続き情報を収集中である。本剤の使用にあたっては、あらかじめ被接種者又は代諾者に、本剤に関する最新の有効性及び安全性について文書で説明した上で、予診票等で文書による同意を得た上で接種すること。また、有害事象が認められた際には、必要に応じて予防接種法に基づく副反応疑い報告制度等に基づき報告すること。なお、本剤の製造販売後に収集された情報については、最新の情報を随時参照すること。

 また厚生省のホームページには、このようなお知らせもあります。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00218.html

 



「接種を受ける際の同意

 新型コロナワクチンの接種は、国民の皆さまに受けていただくようお勧めしていますが、接種を受けることは強制ではありません。しっかり情報提供を行ったうえで、接種を受ける方の同意がある場合に限り接種が行われます。
 予防接種を受ける方には、予防接種による感染症予防の効果と副反応のリスクの双方について理解した上で、自らの意志で接種を受けていただいています。受ける方の同意なく、接種が行われることはありません。
 職場や周りの方などに接種を強制したり、接種を受けていない人に差別的な扱いをすることのないようお願いいたします。」

 そして、ある程度の副反応による被害が起きることを想定して、救済制度も設けられています。

「接種を受けた後に副反応が起きた場合の予防接種健康被害救済制度

 一般的に、ワクチン接種では、副反応による健康被害(病気になったり障害が残ったりすること)が起こることがあります。極めて稀ではあるものの、なくすことができないことから、救済制度が設けられています。
 救済制度では、予防接種によって健康被害が生じ、医療機関での治療が必要になったり、障害が残ったりした場合に、予防接種法に基づく救済(医療費・障害年金等の給付)が受けられます。 
 新型コロナワクチンの接種についても、健康被害が生じた場合には、予防接種法に基づく救済を受けることができます。」

 つまり、「未知の危険性のある薬なので、自己責任で接種をする同意書にサインしてください。治験中の薬ですので、接種の判断には、最新情報を参考にしてください。万が一障害が出た場合に備えて、救済制度も準備しています。」ということです。

 ワクチンの説明書に「製造販売後も引き続き情報を収集中である…なお、本剤の製造販売後に収集された情報については、最新の情報を随時参照すること。」とあり、確かに、情報は厚生労働省により開示されてますが、一般人が見つけるのは非常に困難です。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_18848.html



 年齢別の副反応率、副反応の重篤化率の整理されたデータは、どうやっても厚生省のデータベースでは見つけられなかったので(もし見つけたら教えてください)、非常によくまとまった形で毎週更新されているカナダのデータを使いました。人種のバラエティも幅広いカナダでの治験データであれば、ワクチンのリスクを算出する素材とし十分であると判断しました。
https://health-infobase.canada.ca/covid-19/vaccine-safety/

 

 




 こうやって集めたデータを用いて作成したのが、以下の比較表です。数値の単位は、10万人あたりの人数です。


 新型コロナウイルス感染での重症化のリスクとワクチン副作用の重篤化のリスクを比べると、男性では50−59歳(ピンク)、女性では、60−69歳(黄色)でワクチンのリスクが感染のリスクを下回ること分かりました。

 新型コロナ感染での死亡リスクとワクチン副反応による死亡リスクは、日本の1.26と米国の1.8のどちらの数値を採用しても、50−59歳(赤字)でワクチンのリスクが感染のリスクを下回ることが示唆されます。

 このデータからは、40−49歳以下の年齢層でのワクチン接種では、ワクチン接種による健康被害のリスクが感染のリスクを上回ってしまう、つまり、ワクチン接種はむしろ有害であるという判断が成り立ちます。

 この表で他に特筆すべきは、副反応の発生率が男性に比べて女性で著しく高くなっている(最大7.46倍)ことです。このデータで見る限り、女性のワクチン接種の判断は、より慎重に行われるべきと考えられます。また、コロナウイルス感染症の重症化のリスクとなる基礎疾患として、慢性腎臓病、慢性閉塞性肺疾患、糖尿病、高血圧、心血管疾患、肥満(BMI30以上)も指摘されていますから、これらの基礎疾患の有無と症状の度合いも判断の際には考慮される必要があります。
https://www.mhlw.go.jp/content/000749530.pdf


 もう少しワクチンの副反応の実態が明らかになれば、副反応のリスクを高める要因となる基礎疾患や個体属性もはっきりしてくると思われますので、今後はそれらも考慮に入れて判断をすることが可能になるでしょう。

 この表でのワクチンのリスクを表す数値は、接種後0日〜約6ヶ月で集められた数値ですので、短〜中期の副反応の治験データと解釈できるため、長期の副反応のリスクはまだ未知数のままであると思われます。この未知の数値をどの程度上乗せして計算すべきかは、ワクチンの長期副反応に関する仮説の設定によって変化しますので、ここでの議論は控えます。

 またこれらの数値は、ワクチン有効率100%(感染によるリスクが0になる)場合を想定し、コロナ感染のリスクとの比較に使用していますが、実際には有効率95%という報告が出されていますので、ワクチンのリスクの数値を0.95で割った数値を用いることでより正確な比較が可能になります。ただ、このまま比較しても、カットオフラインに変化はありませんから、問題はないと考えています。

 ワクチンによる死亡リスクとして用いた数値は、ワクチンとの関連が疑われる死亡数であり、関連が最終的に証明されている死亡数ではありません。また、ワクチン副反応の数値においても、全てのケースが報告されカウントされているわけではなく、全てのケースが実際にワクチンと関連しているという保証もありません。さらに、コロナ感染者数にはPCR検査の偽陽性も多数含まれており、コロナ感染症での死亡者カウントにも基礎疾患やその他の原因で亡くなった方が含まれている可能性も指摘されているため、全ての数値が潜在的に不正確であることは否めません。

 しかし、これらのあやふやな数値からぼんやりと見えてくる傾向は、現在手に入る情報から自己責任で国民一人一人がワクチン接種の判断をしなくてはならない状況の指標としては、十分に利用価値があると思います。

  これらの数値に加え、居住地と日常生活圏でのコロナ感染のリスクが日本の平均的なリスクと比べてどの程度であるかを調べることも必要です。都市部と田舎部では感染率や死亡率は大きく異なりますし、都道府県によっても差異がありますから、ワクチン接種の妥当性も地域差を考慮に入れてケースバイケースに判断しなくてはなりません。次回この表を新しいデータで更新する際には、都道府県別のリスク換算表も作成するつもりです。また、職業によっても新型コロナウイルス感染のリスクは変わりますので、もし入可能であれば、職業別の感染リスクのデータも入手し分析に加えたいと思います。

 

  次回は、(2)ワクチンの効果について考察をいたします。

 

 

 

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