(3)『ワクチン接種の他に道はないのか?』コロナ感染対策としてのワクチンの位置づけ

新型コロナワクチンによって防げること
 ワクチンの目的は、接種者の特定のウイルス(この場合は新型コロナウイルス)に特化した防御体制(免疫力)を強化することです。では、ワクチンを打たないと、ウイルスに対抗できないのか?実はそういうわけでもなく、常に機能している免疫系やその他の衛生行動によって、全人口の99.1%以上の方(日本では現在99.4%)は感染しません。ワクチンは、運悪くコロナに感染し発症してしまう残りの0.83~0.88%の被害者を0.04%にまで減らすというスケールで有効です。

 厚生省の見解としては、新型コロナワクチンでは、発症や重症化を抑制することはできても、「感染予防効果は実証しにくく、臨床試験で確認することは稀。発症しない感染者が多数存在する新型コロナでは、実証が難しい」とされています。

 

https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000778309.pdf


 このことを文字通りに解釈すると、ワクチンの大規模接種により、次の二つのシナリオが考えられるということになります。

 

(1)ワクチンによる感染の予防効果が薄く、発症と重症化の予防効果が大きな場合:無症状感染者がより高い割合で出現することになります。これは、新型コロナウイルス感染症における「多数存在する無症状感染者が気づかないうちに感染を広げるリスク」という特殊性を考慮すると、マスクやソーシャルディスタンシングを行わなくなったワクチン接種者に無症状感染者が増えることで、そこから感染が広がるリスクが高まるということになります。
(2)感染予防と発症・重症化予防の効果が同程度である場合:パンデミック収束に有効なワクチンということになります。


 つまり、現段階ではこのどちらに転ぶか分からない、というのが現実です。

 また、よく話題になる集団免疫(人口の一定割合以上の人が免疫を持つと、感染患者が出ても、他の人に感染しにくくなることで、感染症が流行しなくなる状態のことー厚生省ホームページより)に関しても、ワクチンによる効果は「大規模な接種までわからない」とされています。このことから、ワクチン接種を「人のため、社会のため」、ワクチン接種しないことを「自分勝手、社会の迷惑」とするのは、誤まった認識であると断言できます。

 

 ワクチンは、あくまでも接種した本人が病気になる可能性を下げる予防手段です。新型コロナワクチンでは、正確な効果や副反応も分かっていない部分が多く、大規模接種による影響が凶と出るか吉と出るかわからない現状においては、ワクチン接種が他者や社会のためになるかどうかを評価することは不可能です。ワクチン接種は、あくまでも個人の必要性から判断されるべきで、「人のため、社会のため」という目的を考慮に入れる余地はありません。

 整理すると、新型コロナワクチンは、現段階では以下のような予防策と思われます。
 
○緊急時に承認手続きを簡略化した緊急承認の医薬品。
○長期安定性に関わる情報は、限られている。
○集団免疫効果は、大規模接種が終わるまでわからない。
○感染予防効果は、検証が困難。
○予防効果の持続期間は、確立していない。
○発症と重症化を下げることは、期待される。
○変異株への有効性は、わからない。

 パンデミックの最中に、かなり強力な免疫反応を引き起こすmRNAワクチンの大規模接種を行うことで、接種者の体内で新型コロナウイルスが突然変異により感染力と毒性を増して生き残る危険性が高まるという仮説や、新型コロナウイルスという特定の異物への免疫性が高められることで、より守備範囲の広い自然免疫の働きが抑制されるという仮説もありますが、これらは中〜長のワクチンによる影響ですので、もう少し時期を待たないとこれらのリスクが実際にはどの程度のものなのかを判定することは難しいと思われます。これらの仮説に関しては、別の機会に内容を検討するつもりでおります。

ワクチン接種以外の手段
 ワクチンの有効性が、ウイルスに感染する可能性のある0.83~0.88%を0.04%にまで減らすというものであるならば、より安全に同じ程度の効果、あるいはそれ以上の効果を得られるその他の手法があれば、ワクチンを使用する意義は小さくなります。

(1)新型コロナウイルスに感染する
 免疫は、実際にその病気にかかることでも獲得されます。少々乱暴に聞こえるかもしれませんが、病気にかかって重症化する危険性がさほど高くないと判断される場合には、もしかかった場合にはしっかりと養生をして、感染〜回復のプロセスを経て免疫を獲得するという選択肢もあり得ます。過去のパンデミックは、このようなプロセスで集団免疫が獲得され収束したと考えられています。「新型コロナウイルスの”いま”に関する11の知識(2021年6月版)」によると、日本では今までのところ人口の0.6%が感染しています。感染して重症化するのは30歳代以下は0.1%(99.99%は軽症)未満、50歳代以下で0.3%(99.7%は軽症)、60歳台以上でも8.5%(91.5%は軽症)です。

 

https://www.mhlw.go.jp/content/000788485.pdf

 仮に感染したとしても重症化する割合は非常に小さいと判断し、感染予防行動を注意深く行い、食事、運動、サプリなどの活用などの健康増進に繋がる生活習慣を実践することで感染を予防し、ワクチンは接種しないという選択肢は、十分に合理的です。自分の属する年齢層での重症化率を参考にし、体力や病歴、現在の健康状態を考慮して、ワクチンのリスクと感染するリスクを比較検討するのが良いと思います。

 参考までに、2009年の新型インフルエンザでは、12月中旬で国民の1/8(感染率12.5%/0.6%の新型コロナの20倍以上)が医療機関を受診し、重症化するリスクは0.0006%であったのに対し、コロナの重症化リスクは50歳代以下で0.0018%、60歳代以上で0.051%です。新型コロナは、インフルエンザほどの感染の広がりはないものの、重症化するリスクは高いということになります。いずれにしても、現時点では、統計的に99.9%以上の方は新型コロナで重症を患うことはないということになります。

https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/pdf/091225-01.pdf

 

 

(2)免疫力を上げる健康行動
 一般的に免疫力を上げる手法として、生活習慣の改善、食事療法(サプリなどの利用も含む)、運動療法、ストレスマネージメント、鍼灸などの代替医療など効果の実証されているものが多数あります。一般に、これらの行動は体への負担が少なく、ワクチン接種で懸念されるような健康リスクはほとんどありません。ただし、これらを日々の生活の中に取り入れて実践/継続させるには、強い目的意識と意志が要求されますから、これらの行動をこれまで全く行ってこなかった方にとってはハードルの高い選択肢かもしれません。

(3)感染リスクを下げる行動
 感染リスクを下げる行動に関しては、マスクの適切な利用や集会の制限など、厚生省からかなり細かく具体的な対策が示されています。しかし、これらの感染対策によって流行が収束していないということは、手法の有効性は実証されていないということにもなりますから、絶対的な予防法ではないという理解のもと実行することが大切です。

 

 https://www.mhlw.go.jp/content/000749530.pdf

 

 

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