7)都会から田舎への移住に伴う意識改革 第七部 提案6:直感と感覚を用いる経験的学習

 今の世の中、インターネットや書籍によって、新しく物事を始めるためにとりあえず必要な知識と情報は、非常に簡単に手に入るようになりました。ひと昔前の江戸時代には、貴重な外国の書物1冊(例えばオランダの医学書)から、そこに含まれている情報と知識を必死の思いで抽出して学んだわけですから、文書、写真、動画など、ありとあらゆる形態の情報がいつでもどこでも手に入る現代の状況は、その当時の学者から見ると、まさに夢のような状況です。

 しかし、このように情報へのアクセスが手軽になった一方で、自らの感性と感覚を用いて直感的に物事を理解する動物的本能はあまり必要とされなくなり、徐々に退化していると感じられます。

 現代人が新しいことを始める場合には、すでに体系化された知識を学び、経験者(先生)から実践的なトレーニングを十分に受けてから、始めて一人立ちするというのが一般的なプロセスだと思います。しかし、マルチタスクをこなそうとする田舎の生活で、全てにおいてこのような緻密な学習プロセスを踏んでいたのでは、教育段階に膨大な費用と時間がかかってしまい、いつまでたっても何も実践できないという状態に陥ってしまいます。


 都会から田舎に移住すると、家周りのメンテや農作業において、それまでやったことのないことをしなくてはならない状況に遭遇します。特に緊急を要する場合、作業手順の大雑把な知識を確認したら、嫌が応もなく、とにかくやるしかないという場面が多くなります。やったことのない新しいことを、最低限の予備知識でいきなり実践する…。でも、そんなことできるのか?

 

 そのためには、その場でその時に観察される事象、過去の類似した経験の呼び起こし、感覚を通じて直感的に感じられるものへの意識を高め、これらのリアルタイムの情報を知り得た専門知識と合わせ、冷静な知的分析をしながらノウハウを即興的に編み出し、それを実験することになります。

 もちろん、失敗は起こりますが、このように知性と直感を総動員して取り組んでいる時に経験する失敗からは、実に濃厚な真理を学ぶことができますから、何度か試行錯誤を繰り返しているうちに、どうにかこうにかできるようになります。そうなったら、すでにそのタスクの全貌をだいたい把握できていると言えます。このタイミングで先達のアドバイスを受けたり、さらなる詳細情報を入れると、飛躍的に能力が高まります。自分が専門としているハープの技能も、この方法で独学で習得し、わずか数年でプロのレベルまで到達できましたから、この方法でかなり複雑な専門技能を学ぶことが可能だと思います。

 


 しかし、このように新しいことを最低限の予備知識で実践する場合には、直感と感性に傾倒しすぎるのも危険です。きちんと知識を得た上で一般常識に従い、安全へは特に配慮をし、失敗時のダメージが最小限になるように計画的に実践することをお勧めします。特に、事故による怪我につながらないように、注意しましょう。

 

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