(4)『ワクチン未接種は悪なのか?』ー社会的な圧力によりワクチン接種を迫られることの意味

 通常、新しい病気への対処には、まず治療薬の開発を含む治療法の研究が行われ、新薬の試験的な使用は、何らかの治療をしないと命が危ない状況にある重症者を中心に行われます。重症者には、すでに病気によって健康が害され死亡するリスクがあるため、治療効果の期待される新薬の未知の副反応のリスクが相殺され、新薬の試験的投与が正当化されます。ところが、新型コロナ感染症に関しては、今苦しんでいる重症患者を救うための治療薬の開発と治験という段階を飛び越して、感染予防に論点が移り、健康な方に緊急承認をしたワクチンの接種を推奨しています。これには、非常な違和感を感じます。重症化を防ぎ、死亡者を少なくできる治療法を確立すれば、病気自体の脅威は低くなりますから、まずはこの方向での対処にエネルギーを注ぎ、今危機に晒されている救える命をできるだけ救うことが先決で、新薬の緊急承認のという非常手段は、そのためにこそ用いられるべきではないでしょうか?

 ワクチン接種は本来、接種を受ける個人の健康に関する選択ですから、これまで社会的責任という文脈で語られることはありませんでした。しかし、この新型コロナウイルスワクチンに関しては、しばしば「他者への配慮」ということが論点になります。その背景には、ワクチンによって社会全体として集団免疫を獲得し、パンデミックを終わらせるというシナリオがあります。これまで人類が経験したパンデミックでは、自然感染が広がって集団免疫が獲得されるというプロセスを経て収束したのに対し、今回は、パンデミックの最中にワクチンという人工的な手段で集団免疫を獲得して収束させようとしています。

 しかし実際には、新型コロナワクチンにどれほどの感染予防の効果があるのか、どの程度の期間効果が持続するのか、実際に集団免疫効果があるのか、何も明らかにはなっていません。厚生省は、「インフルエンザワクチンでは、一定の発症予防効果(研究により20から60%)や、重症化を予防する効果が示されているが、集団免疫効果はこれまで実証されていない」という見解を示しています。つまり、「ワクチン由来の集団免疫によるパンデミック収束」というシナリオは、やってみるまで成功するかどうか分からないということです。

 アメリカでは、集団免疫に必要なワクチン接種率は60−75%と報道され、ワクチン接種が盛んに進められていますが、治験データの不足している新薬であるワクチンの接種を、国民の自由意志、自己責任のもとに選択させ、接種率を60−75%まで持ってゆくという政策は、冷静に考えてみるとかなり大胆で冒険的な社会実験です。もし、ワクチンに予測できない長期的で不可逆的な副反応があった場合、その被害のリスクが国民の半分以上、場合によってはほとんどの国民に及ぶことになります。このようなリスクが正当化されるには、その犠牲を払ってでも回避すべきさらに大きな危機が迫っていなくてはなりません。

 しかし、日本のコロナウイルス感染症の危機は、実際にそれほど大きいものなのでしょうか?実は、これまでに存在していた他の病気と比較してみると、必ずしもそうとも思えないのです。

 コロナウイルス感染とコロナワクチン副反応の重症化及び死亡リスク比較表の右端に、2009年(一部2019年)の肺炎による死亡率を添付しています。コロナと肺炎の死亡率を比較すると、肺炎リスクの方が若年層で数倍、高齢者では数百倍大きくなっています。このことから、新型コロナウイルス感染症は、例年多くの死者を出す様々な肺炎の一つに過ぎないという解釈も成り立ちます。

 また、若年層の重症化率と死亡率の著しく低い新型コロナウイルス感染症においては、ワクチンのリスクとの比較において、40歳未満の接種はむしろ有害と解釈するのが妥当だと思います。特に女性の副作用率は男性に比べて2−8倍程度高いため、特に注意が必要です。また子供のコロナ感染によるリスクは著しく低いため、子供へのワクチン接種は特に有害であると判断されます。

 緊急承認のワクチンの大規模接種が必要と認識されるほどの危機的なパンデミックの吹き荒れた2020年には、例年に比べて圧倒的に死者数が増加したに違いないと考え、人口統計を調べたのですが、予想外の驚くべき事実に遭遇しました。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQODG228660S1A220C2000000/

 

(日本経済新聞2021年2月22日より)
「2020年の国内の死亡数は前年より約9千人減少したことが22日分かった。死亡数は高齢化で年平均2万人程度増えており、減少は11年ぶり。
厚生労働省が22日に発表した人口動態統計(速報)によると、20年に死亡したのは138万4544人で、前年より9373人(0.7%)減った。速報に死因別のデータはない。
同省が9月分まで発表している死因別の死亡数(概数)によると、前年同期より最も減少したのは呼吸器系疾患で約1万6千人減っていた。内訳は肺炎(新型コロナなどを除く)が約1万2千人、インフルエンザが約2千人減っていた。」

 この報道によると、例年通常の肺炎やインフルエンザで亡くなっていた数が新型コロナウイルスでの死亡に置き換わったように見えますので、コロナが肺炎の範疇にあるという解釈もまんざら的外れではないように思われます。しかも、2020年の死者数が前年よりも減少しているので、新型コロナウイルスの登場によって国民の生命の危険が著しく高まっているという認識は成立しません。

 このような状況で、緊急承認された新薬(ワクチン)の接種を国策として推奨し、それに賛同する個人や組織が同調圧力や差別を用いて押し進めることは、不条理であるばかりでなく、憲法違反とも解釈できる行為です。

 日本国憲法第十三条には、「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」と記されています。

 もし、企業や団体が差別や同調圧力によって個人にワクチン接種を脅迫的に要求するというような事態が起こっているとしたらどうでしょう?、例えば、ワクチン接種をためらう医療従事者、病院の方針に逆らって患者にワクチンを積極的に勧めない医師、病院実習を控えた医学生や看護学生などに対し、「仕事/学業を諦めるか?それともワクチン接種か?」というような選択を迫る状況が作られ、それを国家として黙認するとしたら、それはワクチンを接種しないことが「公共の福祉に反する」とみなされたということになります。しかし、「ワクチン非接種=反社会的行為」などという解釈に、法的な合理性があるとはとても思えません。

 ワクチン接種は、個々の生命と健康に関わる問題であり、その選択においては自由が保障されるべきです。仕事や勉学という幸福の追求に関しても、公共の福祉に反しない限り妨害されるべきではありません。カリフォルニアでは、音楽業界において、まさにこの自由の侵害が起こっています。とは言え、音楽業界や芸能界ではアーティストの立場が弱く、平常時でも「干す/干される」というハラスメントが起きやすい構造ですから、こうなっても仕方ないと諦めることもできるのですが、他業界はこのような空気に流されないことを祈っております。

 また、日本国憲法の第十八条には、「何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。」ともあります。仕事や勉学の継続、公共交通機関や施設の利用のために、否応もなくワクチン接種しなくてはならない空気は、まさに奴隷的拘束にあたるのではないでしょうか。

 厚生省のホームページには、以下のような呼びかけもあります。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00218.html


「職場や周りの方などに接種を強制したり、接種を受けていない人に差別的な扱いをすることのないようお願いいたします。
 ⇒職場におけるいじめ・嫌がらせなどに関する相談窓口はこちら
 ⇒人権相談に関する窓口はこちら」

 このように、政府としては憲法の遵守を大前提に接種を奨めていますから、ワクチン接種をめぐる差別的な空気があるとすると、それは国民自身が生み出していることになります。差別をすることだけでなく、差別に泣き寝入りすることも、この空気を増強する要因となります。政府もそのことを危惧しているらしく、相談窓口も設けられ、政府がこの問題に介入することができるようになっています。

 新型コロナウイルス感染と新型コロナワクチンに関する問題に真摯に向き合うことは、個人の生命と生活だけでなく、民主主義国家日本の在り方にも影響する重大な責務であると自覚した上で、意思決定をすべきだと思います。


後書き)
 このレポートは自分自身のために行なったリサーチを整理したものですが、新型コロナワクチン接種という重大な問題をみなさんと一緒に考えるきっかけになればと思い、意思決定のプロセスを公開することにいたしました。ワクチン接種の是非に関しては、感染症という専門性の高い分野である上に、専門家の間でも賛成から反対まで説得力のある仮説が存在するため、一般人には判断が困難です。保健師の資格を持っていても、かなりの労力と時間を費やし情報収集/分析をする必要がありました。このレポートでは、厚生省の「しっかりした情報提供を行なった上で、接種を受ける方の同意がある場合に限り接種が行われます。」という言葉をあえて愚直に信じる立場から、誰でもアクセスできる政府機関から公式に発表されているデータと情報をもとに考察しました。実際には、民間による情報や独立した研究者からの仮説など、他にも信頼性の高い情報が多数存在するのですが、それらは大手メディアによってデマと決めつけられることが多く、実際に極端な反ワクチンの意見や言論の根拠としても用いられるため、「ウソ臭い」という第一印象を与えてしまいます。そのため、公正中立の立場を明確にするため、このレポートでは、それらはあえて考察対象には加えませんでした。

 このレポートで述べられている内容は、社会的な責任を有する専門家による提案ではなく、一個人がワクチン接種という非常に専門性の高い問題に関して自己責任で判断する必要性に迫られて行った悪戦苦闘の試みですから、普遍的な結論を断定づけるものではありません。あくまでも意識決定のプロセスの一例として参考にしていただけると幸いです。

 ご意見や新情報、ご感想がありましたらぜひご教示ください。今後のリサーチの参考にさせていただきます。

 
 

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