パーマカルチャー/持続可能な生き方

 古佐小ファームで取り組んでいる試みは、パーマカルチャーに分類されます。日本ではまだあまり浸透していない用語かもしれませんが、定義は以下のとおりです。

Permaculture is a system of agricultural and social design principles centered around simulating or directly utilizing the patterns and features observed in natural ecosystems.”

「パーマカルチャー(持続型農業、持続型文化)とは、自然の生態系に見られるパターンや特徴の直接活用とそれらの模倣を主軸とした農業と社会デザイン原理のシステムである。」

 

 有機農法も服もより大きな概念で、パーマカルチャーでの農業は、有機肥料や有機除草剤なども使わず、その場の自然の生態系のサイクルの範囲で食料を確保する環境を整備するので、自然農法に近いものになります。ただ、パーマカルチャーでは、食料だけでなく、水、燃料などの生活に必要な様々な資源を確保できる環境を整え、その供給が半永久的に持続可能な状態を目指しますから、自然農法よりもさらに大きな概念です。

 

 まず、居地に選んだ場所の自然を、ただ観察する。そして、環境に介入して、それがどのようなインパクトを与えるか、自然の変化を観察する。下手に農業の知識や技術があると、やたらと介入しすぎてしまい、このただ観察するというのは案外と難しいのですが、この観察という部分がパーマカルチャーの最も重要なキモだと思います。

 

 現在のファームに居を移して3年間、最小限の介入と観察に終始し、ようやく4年目にして、なんとなくこの土地の環境の概要が分かりかけてきた気がします。

 

 パーマカルチャーでの農業は、まさに脳業。同じ地域に属する土地でも、水利や日照、地形にそれぞれに独自の特徴があるので、現場での観察に基づくデータの蓄積とその分析が不可欠で、このデータ処理がいわゆる科学的な量的なデータだけでなく、感情や感覚による質的なデータにまで及ぶため、非常に高度な知的活動が要求されます。しかも、やったことの成果が目に見えるようになるまで、数ヶ月から数年かかるので、忍耐と持続力も必要です。

 

 パーマカルチャーの畑は、雑草も作物も一緒に生えているので、一見ぐちゃぐちゃですが、土中の微生物環境は良好です。カエルや鳥、捕食者のカマキリなどの昆虫も多く生息し、案外と害虫の害も少なく、作物もそこそこ収穫できます。例えばイチゴ。最初はほとんどの果実が虫にやられていましたが、コンパニオン作物として植えていたネギが育ち、いろんな雑草が茂ってくると、虫の害も拡散し、8割の果実は無傷で収穫できるようになりました。もちろん、スーパーで売ってるようなツヤツヤの大粒のイチゴというわけにはいきませんが、十分に美味しくて栄養価の高いイチゴが夫婦2名では食べきれないほど収穫できます。

 

 パーマカルチャーの目指している農業環境は、狩猟採取民にとっての理想のフィールドと考えるとわかりやすいと思います。イチゴを雑草を掻き分けて摘むのは面倒だし、剪定しないので果実も小粒で畑の見た目も良くありませんが、これが野生のイチゴの群生地と考えたら超ラッキースポットです。他の野菜も同じく、見た目や収穫の便は悪いですが、自然の中で食べ物を探し歩くことを考えたら、まさに楽園のような状況です。家畜の動物も然り。獲物を探して森の中を何時間も、何日もさまようことなく、常に食べられる動物がそこにいて、毎日卵を産む鳥の群生地もあるのですから、楽園そのものです。

 

 パーマカルチャーでは、一見無駄がたくさんあるように見えるのも面白い点だと思います。しかし、この「無駄」という認識も、人間の立場からの一元的な認識にすぎません。一つの花から何十もの種が取れる自然のデザインを考えると、むしろ人間の目には無駄と思える余剰分があってこそ、全体の生態系はバランス良く機能することができると思います。

 

 そして、パーマカルチャーにおいては、人間はあくまでも世話役に徹することが大切です。今暮らしている場所が豊かな生命に満ち溢れ、それがほぼ自力で持続するように環境を整える役目で、言うなれば楽園の庭師、管理人というところでしょうか。そして、そこにいる生命体すべてに恵みをもたらす環境を整えるという目的意識も大切です。人間のエゴで環境を作り変えるのではなく、人間と生態系のウィン・ウィンの関係を目指すライフスタイルが、パーマカルチャーなのかなと思います。

 

 

 

 

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