貧乏は怖くない!貧乏転じて福となす(2)

 フリーランスで音楽の仕事をしていると、固定収入はなく、社会情勢によって音楽イベントの需要は激しく上下しますから、計画的に収入を増すことは非常に困難です。それに加え、景気が悪化すると真っ先に切られる業界ですから、一気に収入が減る危険性と常に背中合わせです。

 このような状況で、貧乏による困窮を確実に軽減する方法は、まず支出を抑えることです。そのためには、まず、できるだけ家賃がかからない生活費の低い地域に住むのが得策です。

 一番手っ取り早い方法は、都会ではなく田舎に住むこと。まずは家賃が半分以下になり、生活環境は格段に良くなります。これだけでもかなり貧乏による困窮度合を減らすことができます。でも、不便なのでは?確かに、一見不便そうに思えますが、ネットの発達のおかげで、情報と物品はかなりの田舎でも都会と同じくらいに入手できますから、さほど不便でもありません。音楽家のように都会に出向いて仕事をしなくてはならない場合、交通費や移動にかかる時間が膨大になるように思えるかもしれませんが、渋滞の大都市の中を移動する効率の悪さを考えると、思ったほどには移動に余分な時間がかかるわけでもなく、自動車での移動の場合にかかる高速道路代やガソリンの費用は、家賃やその他の生活費が安くなったおかげで浮いたお金の一部で十分に補填できます。

 ただ、家賃の安い古い家に住むと、色々と修理しなくてはならない箇所も多くあります。そこでいちいち業者を雇っていたのでは、結局高くついてしまうので、DIYで自分でやるのが得策です。道具を揃えるための初期投資をすれば、自分のスケジュールで必要に応じて作業をできるし、資材や部品の代金しか費用がかかりませんから、かなりのお金を節約できます。そして、何よりも、家周りの修理や整備を自分でやることで、生活インフラに関しての理解が深まり、生きるということに自信が持てるようになります。そうなると、貧乏への恐怖はますます小さくなります。ちょっとした家具なども自作できるようになると、お金をかけなくても、まあまあ快適な生活環境を整えることができるようになります。

 自動車も、エンジンやトランスミッションなどに致命的なダメージがなくちゃんと走るのであれば、安い中古車で十分です。ただ、修理やメンテの必要性は大きくなります。そこで自動車屋に持ち込んでいたのでは、あまり節約になりませんから、自分で基本的な修理とメンテをする覚悟が必要です。毎日足のように使っている乗り物の仕組みについて何も知らないという方がよっぽど異常な状態ですから、自動車を多少いじれる程度の知識は持っておいても損はありません。頑張ってチャレンジしてみましょう。現代は、知識と情報はネットを通じていくらでも無料で手に入りますから、学ぶ気さえあれば、ほとんどどんなことでもお金をかけずに学ぶことができます。あとは、実際に自分でやってみる行動力があれば、誰にでも始められます。行動力のない方でも、貧乏のおかげで必要に迫られ、嫌が応もなく自分でやる状況に追い込まれますから、思いもしなかったことを新たに学ぶ機会に多く恵まれるのです。

 食費を節約するには、まずは不必要な外食を減らすことが一番です。自炊をするためには、食材や調理法に関する知識と技術を学ぶことになるので、自然と料理が上手になります。健康を考えると、食材も有機食品や遺伝子組み換えのないものを選びたくなりますが、そういう素材は、いかんせん値段も高い。それを買う金がないとなると、自分で育ててみるという選択肢を選ばざるを得なくなり、農業や畜産業にも手を出さざるを得ません。一見大変そうにも思えるのですが、150年ほど前には、皆が普通にやっていたことですから、家庭で消費する程度の食料を生産するのは、やってできないことではありません。自宅で食料を生産すると、有機栽培を選択することもできるし、何よりも新鮮なものが手に入るので、お金の節約以上に多くの利点があります。田舎に暮らすことので、家賃と食費の節約が可能になるわけです。
 
 次に、健康。

 貧乏をしていても、心身が元気なら、日々小さな喜びもあって幸せに生きられるのですが、健康を損なうと、出費が大きくなると同時に収入のための労働は停止してしまい、かなり生活が困窮します。アメリカでは、貧乏だと高額な医療保険には加入できないため、ややこしい病気になって病院にかかると、破産に直結します。つまり、医療の最先端のアメリカにいながら、発展途上国の国民よりも医療を受けられるチャンスは少ないわけです。こんな状況で健康を維持するには、自力で予防と健康増進に勤めるしか手段はありません。そのためには、健康に関する知識や情報を収集し、健康管理は完全に自己責任で行う覚悟をしなくてはなりません。

 そうなると、自ずと食生活、運動と休息のバランス、ストレスのマネージメント、飲酒や喫煙などの健康リスクの高い生活習慣のコントロールなども自分で行うこととなります。貧乏のおかげで医療を使えないという崖っぷちに立たされるため、自己管理能力が著しく高まるというわけです。自己管理能力。これは、なかなか一朝一夕で身につくものではなく、お金では手に入らない能力ですから、貧乏のおかげで貴重な財産を手に入れることになるわけです。外傷の応急処置の方法、薬草の活用、基本的なマッサージや整体なども度家庭でできるように、少しずつ知識と技術を蓄積することになるので、治療もある程度まで自給自足できるようになります。

 医療にかかれないような状況は、悲惨とお感じになるかも知れませんが、150年ほど前には、ほとんどみんなが健康管理は自己責任で行っていたわけです。おそらく当時は、怪我をしたり病気になったら死ぬかも知れないという覚悟をして、日々生きていたと思われます。いつか必ずやってくる死を意識しながら、今日の生のありがたさを感じ、日々を大切に生きることは、決して惨めな状態ではありません。むしろ、そのような覚悟があってこそ、本当の意味で日々の経験を楽しみながら、今生きている幸せを感じることができるのではないでしょうか。

 

Leave a comment