音楽活動休止期をどう生き延びるか?

 この時期、音楽以外の仕事をせずに収入を確保できている音楽家の皆さんは、こうなる以前から、オンライン収入、物販収入、貯金、配偶者の安定収入、その他不労所得など、いろんなルートで収入が現金の供給が途切れないようにちゃんと準備されてきたのだと思います。しかし、配偶者がクライアントとの濃厚接触が避けられないマッサージ・セラピストで、夫婦揃ってフリーランスのために失業保険も手当てもなく、常に手元にあるものをすべて注ぎ込んで明日への投資をする生活をしてきた古佐小家では、音楽以外の何か別のことを始めないと、この先食っていけません。

 ということで、新しいYouTubeチャンネルの準備、CD制作など、ライブ演奏活動以外の配信方法を模索していますが、これが収入に繋がるまでにはまだ長い時間がかかりますので、とりあえず、週に2−3日、木こり/樹医の友人の仕事を手伝うバイトをしています。先週からは、森林で木の間引きと倒木や灌木の伐採、それらを後で燃やせるように集めて山積みにするという作業をやってますが、これはかなりキツい。土木建築や農業での肉体労働は、キツい瞬間とそうでもない瞬間が大体半々くらいですから、8時間くらいは無理なく働けるものですが、この仕事は1日6時間が限界。休むのは昼食の30分だけで、後はずっとチェーンソーと伐採した木や灌木を運んで集めるという作業をやることになるので、キツい瞬間が延々と続くのです。仕事が終わると、高校の柔道部の夏合宿での稽古が終わった後のような燃え尽き感を味わえます。

 自分は、音楽の腕前には自信と誇りを持っていますから、たとえ収入につながる音楽の仕事のオファーがあっても、納得できる内容でないかぎり、不本意な形で音楽を切り売りすることはしません。武士は喰わねど高楊枝。コロナ以前からそうでしたから、そもそもギリギリの仕事量でなんとかやっていたところに、今回のコロナ騒動のあおりですべての仕事がなくなり、その結果が木こり。アラフィフにして惨めな貧乏音楽家丸出しで、「それ見たことか!」と笑われても仕方ないところです。

 ただ、ものは考えようで、苦境に直面した時に、こんな重労働もこなせるのも、健康と体力、気力という、金では絶対に得ることのできない貴重な財産を持っているおかげと考えると、そんなに惨めでもありません。雇ってくれている相棒からは、「あんた程の働き手は、なかなか見つからない」と頼りにされて、時給を5ドル上げてくれることになりました。といっても、20ドルの時給が25ドルになっただけのことですから、ちっちゃい話ですけどね。この気力と体力、それにチェーンソーなどの機械の操作技術は、本来賢い大人として不労所得の確保や貯金などに使うべき時間とエネルギーを、ファーム生活と心身の訓練に投資した結果として得られた能力です。それが、今の苦境を生き延びるための手段として役に立っているということは、これまでの投資先も、まんざら間違いではなかったようです。

 自宅ファームでも普段からかなり肉体労働をしていますが、この究極の肉体労働のバイトで、さらに筋肉がムキムキついてます。コロナの自宅待機で皆さん運動不足でお悩みと耳にしますが、こっちは過剰運動が悩みの種。どんだけ食べても、太るどころか絞られて行くばかり。ライザップにお金を払うことを考えたら、木こりバイトのおかげで数十万円の節約をしていることになりますね。もし、このバイトをやっているせいで、音楽家としての進歩が阻害されて腕前が落ちるようなら、惨めな音楽家の末路と揶揄されても仕方のないところですが、そういうことにはなっていないので、不本意な音楽の仕事で信念を切り売りして食いつなぐよりは良いの選択なのかな、と思っています。

 これほどの重労働を6時間ずつ週5日、それで2週間かけて稼ぐ金額を、大きなコンサート1本で稼げますから、音楽家がわずか2時間ほどの演奏時間で背負う責任というのは、それだけ重いということです。だからこそ、音楽家はそれに価する音楽の追求に人生を賭けて取り組み、何があっても信念を曲げて音楽を切り売りするような真似はしてはいかん!そう思うのです。

 このバイトでは、自宅の森林管理に役立つノウハウも学びつつ仕事してますから、お金以上に得るところはありますが、それでも続けられるのはせいぜいあと1−2ヶ月ですね。それ以上やると、惰性でこなせるようになります。そうなると、本当にお金のために時間を切り売りしているだけになってしまうので、それもよろしくない。それまでに音楽活動が再開できる世の中になっていれば良いのですが、そうでない場合には、次の働き口を探さないといけませんね。

 

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