貧乏は怖くない!貧乏転じて福となす(1)


 学生時代は、家賃と学費以外の生活費は全てバイトで稼がないと食っていけないというド貧乏。 物価の高い東京で、風呂なしトイレ共同の6畳一間のアパートを借り、風呂賃のない時には、外の水撒き用のホースで行水をし、食費が足りない時は、学食で「今日の定食」のサンプルを盗み食いしたりしていました。

 アメリカに来てからも貧乏は続き、今年で貧乏歴30年。大学卒業以来、月々の収支を心配しないで生活できたのは、公務員待遇で大学病院の看護師として働いていた1年間のみ。今思えば、夢のように恵まれた生活でした。あとは文字通り「明日をも知れぬ」日雇いのような仕事と、ハープ奏者となってからも、やはり「明日をも知れぬ」フリーランスの音楽収入でなんとか生活をしてきました。そんな綱渡りしながら、3人の子供を育て、末っ子もめでたく就職し、ファーム暮らしをしながら、やりたい音楽をやりたいようにやり、こうやって30年も生き抜くことができたのは、奇跡のように感じます。

 おそらく、アラフィフ同世代の平均収入からすれば、かなりの低所得者だとおもいますが、日々の人生経験という視点から見れば、豊かな生活をさせてもらっています。幸せかどうかと尋ねられれば、不平不満を言い始めたらキリはないけれど、幸せだと言えます。

 貧乏を経験したことのない方は、貧乏に恐怖を感じます。大都会での生活では、生活費が膨大で、お金がないと何も手に入りませんから、貧乏だけはしたくないと思うのは当然のことです。しかし、貧乏を恐れると、思い切った人生の転換も出来ないので、安定した収入のためにやりたくもない仕事を続けたり、好きでもない相手のご機嫌を伺ったり、信念にそぐわない仕事を引き受けたりすることになります。そういうストレスを日々抱えていると、なかなか幸せを感じることはできないし、それが蓄積すると心身を病んでしまい、ますます幸せから遠ざかってしまいます。

 しかし、大人になってから30年も貧乏を通常運転として経験すると、貧乏を恐れるということはなくなります。経済的に多少の不便さを感じることはあるものの、ちょっとしたまとまった収入があった時などには、普段とのギャップでむしろ無邪気に喜べるので、それなりの幸せもあります。

 一度どん底を経験すると、それより少しでもマシな状態であれば、それをありがたいと感じられますから、貧乏でも感謝の念を忘れないで生きられます。もちろん、どん底には戻りたくないという思いはありますが、そこに落ちてもなんとか生きていけるという自信があるので、人生においてリスクを伴う冒険もできるのです。「若い時の苦労は買ってでもしろ」とよく言われますが、まさにその通り。20代〜30代の皆さんには、貧乏覚悟で夢を追ってもらいたいと思います。若い時には無茶できる体力もありますから、貧乏生活のチャレンジも、案外と楽しめるものです。

 厳しい自然環境の中で生活するのも、貧乏への耐性を鍛えるには良い経験です。そこでは、雨風をしのげる家屋、蛇口をひねるとでてくる水とお湯、柔らかい布団、電気やインターネットなどが普通に使える状況など、現代生活では最低限のものが揃っているだけでも、結構幸せを感じられるます。しかも、お金なしで手に入る豊かな自然の恵みに囲まれていますから、こういう環境で生活していると、物欲が少なくなって、金をかけない幸せを見出す機会が多くなります。

 とは言いながらも、貧乏をお勧めする気はありません。貧乏と金持ちのどちらがいいかといえば、もちろん、金持ちの方が良いに決まっています。金があれば、何をするにもたくさんの選択肢がありますから、賢いお金の使い方ができれば、それだけ豊かな人生を送ることができます。しかし、貧乏だと、数少ない選択肢の中で創意工夫をして望むものを手に入れなくてはなりませんから、何をするにも苦労が伴う上に、必ず望みのものが手に入るとも限りません。この貧乏の大変さに押し潰されてしまうと、不安と自己否定で鬱になります。そうならないためには、貧乏の大変さの中で得られるものに喜びを見出さなくてはなりません。

 この記事では、貧乏エキスパートとしての視点から、貧乏であることを転じて福となす生き方を考えたいと思います。

 まずは、貧乏であることの何が問題なのかを考えてみます。

 お金がないと、社会で流通している物品やサービスを受け取ることができなくなります。つまり、貧乏であれば、それだけ手に入る物品や利用できるサービスが少なくなり、生活に困窮することになります。

 こう考えると、実は、お金がないこと自体が問題ではなく、社会生活のなかで物品やサービスに支払う手段がないことが問題となって、困窮するわけです。ここに、貧乏でありながらも豊かに生きられる可能性の糸口があります。つまり、物品やサービスをお金を介さない方法で入手できれば、大部分の困窮からは免れることが可能になります。

 では、お金なしで物品やサービスを手にいれる具体的な方法を考えていきましょう。

 (次回につづく)

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