こんな時だからこそファーム

 音楽業界は、このコロナ騒動で真っ先に全面停止してしまったため、今は収入に結びつく演奏の仕事はありません。それでも、外出規制や物品の買占め、医療崩壊の危機の渦中にある大都市から遠く離れたファームに暮らしていると、ある意味、暮らしは安定しています。ニワトリはいつも通りに地面をつつき、ヤギものんびり草を食み、野菜もすくすくと育っています。食料もまあまあ自給できるし、普段から気楽に買い物に行ける場所ではないので、生活必要物資は常時ある程度備蓄してあり、水も井戸、下水も敷地内で独立処理しているので、7日〜10日に一度買いものに行けば、それほど急に暮らしに困ることもない。

 平時には、何の社会的価値もない自給自足田舎ファームですが、こうなってみると、ファームは社会的な要因での危機には強い。そう実感しています。この自給自足ファームの強靭性が、アメリカ人のこだわる自由と個人主義の根源にあるのかもしれません。開拓時代の政府は、広大な国土に散らばる個人を手厚くケアすることができなかったため、皆が各所で自衛も含めて自給自足をすることで、それに対応していたと考えられます。そのような状況下で、個人の自己責任による判断と行動が尊重される国民性が養われ、それが自由精神と個人主義を形作ったのではないでしょうか。
 
 パンデミックが終わっても、これから訪れる経済危機により、アメリカでは食うや食わずで家を失いホームレスになる家族も続出することでしょう。そういうときに、「困った時には、うちのファームに来てください。ファームを手伝ってくれるのであれば、仮の住まいと日々の食事を提供します。」と胸を張って言えるようになりたい。そういうファームがたくさんあれば、緊急事態の社会のセーフティーネットとして、立派に社会的な役割を担うこともできます。すぐには無理ですが、いつの日か、このファームをそんな場所に発展させたいと心から思うようになりました。

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