(2)「新型コロナワクチン打つべきか、打たざるべきか?」ーワクチンの効果と副反応

厚生省の見解
まず、厚生省の「ワクチンの副反応に対する考え方及び評価について」という資料では、ワクチンの効果に関して以下の見解が伺えます。
https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000778309.pdf



●感染予防効果(接種した人が感染しない)に関しては、「感染予防効果は実証しにくく、臨床試験で確認することは稀。稀発症しない感染者が多数存在する新型コロナでは、実証が難しい。」
●集団免疫効果(摂取していない人にも波及する効果)に関しては「大規模な接種後まで分からない。」
発症予防効果(発症者が減少)に関しては、「接種者と非接種者を比較する臨床試験等で、両群の発症者を比較することで、効果を測定できる。」
●重症化予防効果(死亡、入院等の重傷者が減少)に関しては、「接種者と非接種者を比較する臨床試験等で、両群の発症者を比較することで、効果を測定できる。」

 このようなワクチンの効果への評価の例として、「インフルエンザワクチンでは、一定の発症予防効果(研究により20から60%)や、重症化を予防する効果が示されているが、集団免疫効果はこれまで実証されていない」と記述されています。


 つまり、新型コロナワクチンの効果に関しては、感染自体の予防、集団免疫効果については実証できないが、発症予防と重症化予防の効果は測定できるということです。

 


ファイザー社による臨床試験
 では、次にファイザーによって行われた有効性の治験結果を検討します。

ファイザー社製 コロナウイルス装飾ウリジンRNAワクチンコミナティ筋注の説明書より
https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000778307.pdf

 


12歳以上の健康な参加者を対象に、本剤30μgを19~23日間隔で2回接種したときの有効性及び安全性を検討することを目的として、プラセボ対照無作為化多施設共同試験を実施した。
1)感染歴がない参加者で2回目接種7日以降(追跡期間中央値57日)の感染状況
ワクチン接種群 18,198 / 感染者数 8  (0.044%) ー①  
プラセボ接種群 18,235   / 感染者数 162 (0.888%)ー②
      ①/②=0.049 およそ 0.05
2)感染歴の有無を問わない参加者で2回目接種7日以降(追跡期間中央値55日)の感染状況
ワクチン接種群 19,965 / 感染者数 9  (0.045%)ー①
プラセボ接種群 20,172   / 感染者数 169 (0.838%)ー②
      ①/②=0.0537 およそ 0.05

 ワクチン有効率は、ワクチンを接種しない群での感染率を1とし、ワクチン接種群の感染が0なら有効率100%、感染が起こったらそのパーセンテージを100からマイナスすることで算出されます。

 この実験では、ワクチンなしの状態で起こる自然感染を1としたら、ワクチンありのグループでは約0.05の比率で感染が起こったので、この場合0.05、すなわち5%は感染予防ができなかったと解釈し、100-5=有効率95%となります。

 有効率95%と聞くと、100名が100名が必ず感染する恐ろしいコロナという病気から、95名を救ってくれる特効薬というイメージを抱いてしまいますが、それは誤った認識です。実際には、ワクチンの有無にかかわらず、普通に持っている免疫系やその他の衛生行動によって99.1%以上の方は感染しません。ワクチンは、運悪くコロナに感染してしまう残りの0.83~0.88%の被害者を0.04%にまで減らすというスケールで有効です。このことは、しっかりと理解しておく必要があります。個人という観点で見ると、この数値は非常に小さな効果になりますが、億単位という大きな集団のスケールでは、無視できない効果と言えます。

 これらの治験結果を受け、新型コロナワクチンの効能、効果の持続期間に関しては、以下のように記されています。
https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000778307.pdf

 

 

効能または効果
 SARS-CoV-2による感染症の予防
効能又は効果に関連する注意
 本剤の予防効果の持続期間は確立していない。

 これをみて、「あれ?」とお感じなる方は多いと思います。というのも、厚生省の見解では、感染の予防効果、集団免疫効果については実証できないが、発症予防と重症化予防の効果は測定できるということになっているにもかかわらず、ここでは感染の予防の有効性が証明されていることになっています。もし、この矛盾を文字通り解釈すると、厚生省は実証できない感染予防を効能とするワクチンを緊急承認して接種を推進しているということになります。これは単なる説明不足か、何か見えない合理的な判断が背後にあるのかもしれませんが、今のところは、それを示唆する資料は見つかっておりません。もしご存知の方は、ぜひご教示ください。また、「予防効果の持続期間は確立していない」ということは、未知の副反応のリスクまで負って摂取する治験中の新型ワクチンの効果が、短期間のうちになくなっているかもしれないということです。つまり、これから数ヶ月の安心を得るためだけに、新型ワクチン接種を選択することになっている可能性は忘れてはならないと思います。

 

ワクチン接種による精神的効果
 公衆衛生の観点からは、伝染病のワクチン接種では身体的効果が考慮されるべきで、精神的効果は考慮されるべきではありません。ただし、個人的な選択としてワクチン接種を決断する大きな理由は、それによって病気の脅威から解放されるという点ですから、それによって得られる安心感や不安の解消という精神的効果は十分に考慮されるべきです。

 実際に、政府広報に「ワクチン確保で安心」という動画があり、ワクチンを打つことで得られる安心感を強調し、高齢者への接種を推奨しています。
https://nettv.gov-online.go.jp/prg/prg22679.html

 


 しかしながら、安心するかどうかは、接種をする本人が感染症のリスク評価、ワクチンのリスク評価、ワクチンによる効果の評価を行い納得した上での判断ですから、権威者(施策者)はあくまでも科学的、医学的立場からの公正な情報提供を通じてリスクとベネフィットを正しく説明するべきであり、説明を省いて「安心だ」と呼びかけるのは不適切です。

 自分の場合は、ワクチンを打つ、打たないにかかわらず「覚悟」という心の安らぎ得るために、合理的に状況を把握する努力をしますが、「ともかくワクチンを信じる」という感情を高めることで心の安らぎを求める方もおられると思います。心の安らぎを求めることは、日本国憲法第十三条において「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」と保証されている幸福追求の行動です。その行動が本人の健康利益と相反しても、それは個人の選択の自由です。例えば、飲酒、喫煙、ロッククライミングなどの危険なスポーツでは、幸福追求が健康リスクという代価を伴っていますから、ワクチンに未知のリスクがあってもそれを打つことで安心を得られる、あるいは、ワクチンを打たないことでコロナウイルスへの感染リスクが高まるとしてもその方が安心だという判断のどちらも、個人としては妥当な判断ということになります。

 安心感や不安感は、与えられる情報によっても大きく変化します。新型コロナ感染症という病気のリスクの適切な評価と、それに対処するための様々な手段、その一つとしてのワクチン接種という手段の有効性とリスクに関する情報が一般に理解される形で提供された上で、各人が個別に判断できることが必要です。

ワクチンの副反応
 副反応に関する数値は、「コロナウイルス感染とコロナワクチン副反応の重症化及び死亡リスク比較表」に示してあります。重篤副反応の数値は、副反応例の数値をもとに、カナダでの5月21日時点でのファイザー社のコミナティ筋注の副反応の重篤化率22.3%から算出しています。

 前回の投稿で、同表においてコロナワクチンによる死亡疑い報告数をコロナ感染症での死亡数と比較するのは、ワクチンの死亡率を過大に見積もっているため成り立たないというご指摘をいただきましたので、それに関して説明を加えておきます。


 ワクチンの副反応の報告は、国の定めた基準と医師の判断によりある程度スクリーニングを経ているため、当たらずとも遠からずといった精度で死亡のリスクを反映していると考えています。
https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000784528.pdf

 



 また、副反応による死亡疑いの報告が、実際にワクチン接種と関連しているか否かの判定には時間がかかるため、今すぐに個人のレベルでワクチン接種のリスク評価をしなくてはならない緊急事態では、正確な副反応死のデータが発表されるのを待つことはできません。そのため、「今」の判断をするための暫定的なデータとしては、死亡疑い報告の数値しかないというのが現実です。より正確を期すには、過去のワクチン副反応による死亡疑いの報告のうち、後の解析で何割が確定、何割が判定不能、何割が関連なしと判定されたのかを調べ、その数値でコロナワクチンでの数値の補正をかけるという手段も考えたのですが、さすがにそこまでのリサーチを一名で行うのは無理でした。

 また、ワクチンのリスクの比較対象であるコロナワクチン感染症の死亡リスクとの釣り合いという観点から見ても、かなり妥当性のある数値だと思っています。公式発表されているコロナによる死亡数には、コロナ感染症が直接の死亡原因ではないケースも多く含まれている可能性があり、こちらのリスクもかなり大きく見積もられている疑いがあるため、ワクチンによる死亡リスクが大きめに見積もられたとしても、両者の比較においてはさほど影響がないとも考えられます。もちろん、コロナ感染症が直接の死亡原因であることが確認された死亡数のデータが入手できれば、それに越したことはないのですが、現在のところそのデータは公表されておらず、今すぐにワクチン接種に関する決断をしなくてはならないという切迫した状況においては、この数値をもとに判断するしかないと思われます。

 ワクチンの副反応に関しては、ファイザー社の新型コロナワクチン「コミナティ筋注」の説明書には以下のような副反応への注意が喚起されています。
https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000778307.pdf



 これらの副反応は、接種直後の1−2日内に報告された短期の副反応であり、中〜長期の服反応は含まれていません。

 中〜長期の副反応は、現在もデータは収集/分析過程にあり、分かっていません。

 現在厚生省が副反応に関して暫定的な評価を行っているのは、死亡例とアナフィラキシーショックに関してだけのようです。
https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000784528.pdf

 その他の副反応例に関して厚生省は、現時点の段階では、ワクチン接種との因果関係は評価できないという立場のようです。その根拠となっているのが、以下のWHOの考え方です。

「ワクチン接種後に生じる有害事象の因果関係の評価について・通常、因果関係の評価は、有害事象と予防接種との関連性を証明したり否定したりするものではなく、因果関係評価は、そのような関連性の確実性のレベルを決定するためのものであり、因果関係があるかないかは、個々の事象では確定できないことが多い。
不十分または不完全な症例の情報により適切な因果関係の評価を行うことができず、評価を試みたとしても、情報不足のため有害事象を分類不能または評価不能と判断されることがある。一方で、充分な情報があっても、因果関係を示す明確な証拠がない、あるいは矛盾する証拠があるなどの理由で有害事象として評価困難に分類されることがある。しかし、より多くの症例が報告されることで、より強いシグナルと尤もらしい仮説、あるいは何らかの関連性に対する強い反論が得られる可能性があるため、これらの評価は記録されていくべきである。・因果関係の評価とは、有害事象の事例に関する個人及び集団のデータを系統的に検討し、有害事象とワクチンの因果関係の可能性を見極めていくものである。」

 つまり、ワクチンの副反応に関しての実態を明らかにするには、時間をかけて多量のデータ収集と慎重な解析が必要であるということです。そのため、通常の新薬認可では、数年にわたる治験が要求されるわけですが、今回は緊急承認という特例により、その期間が大幅に短縮されています。これは、接種者がワクチンの副反応において明らかになっていないリスクを負うということを意味しています。このリスクは、現段階で計算することは不可能です。

 「ワクチン打ったけど、俺は大丈夫だったよ。周囲の人もなんともない。」というような個別の事例からは、ワクチンの有害性の全貌は分かりません。恐るべき副反応の例を一つ取り上げて「ワクチン接種は人類の危機だ!」という結論を導き出すこともできません。要するに、今は分からないことはわからないという謙虚な姿勢で臨むしかありません。

 分からないことを判断するための方法は、科学的推論です。新薬の開発者は、当然のことながら、認可基準をクリアするためにありとあらゆる可能性を検討し、理論的には安全で効果のある薬物を製造しています。そうでないと、膨大な研究開発費を無駄にしてしまうことになりますから、ほぼ非の打ちどころのない理論的仮説に基づいて安全性と有効性が想定されています。ですから、多くの医療専門家がワクチンの作用機序を一読したら、「おそらく大丈夫だし効果はあるだろう」と思うのは当然なのです。しかし、あくまでも現時点でわかっている科学的知見に基づく仮説として有力であるということに過ぎず、現代科学で見落とされている様々な人体のメカニズムによって予想外の反応が起きてしまう可能性は残されています。そのため、新薬の実用化においては、立場の異なる研究者による理論仮説の検証、動物を用いた長期のテスト、人間を対象にした慎重なテストが必要になっています。
 
 すでに大規模接種が開始されている新型コロナワクチンにおいては、立場の異なる研究者によるワクチンの安全性と有効性への疑義が出されても、「でも、実際にワクチン接種が始まってるってことは、安全で有効に決まってるじゃないか。今さらそんなこと言っても意味がない。」という雰囲気で無視される傾向にあります。しかし、緊急事態によってそういう議論すらできないまま大規模接種に至ってしまっているため、今さらながらの議論にならざるを得ないのです。彼らの見解を、反ワクチンの非科学的ヒステリーとして決めつける言論も多く見られますが、実際には、まだ専門家による見解が分かれている段階で、長期のデータが出てより客観的な判断材料が揃うまでは、引き続き科学的な議論が深められる必要がある時期なのです。すでに接種をされた方にとっては「今さら言われても困る」というのはその通りですが、このような検証が十分でないまま認可されるのが「緊急承認」であるということをしっかりと理解した上で、接種に同意することが大切だと思います。

 

 次回の投稿では、「新型コロナウイルス感染対策としてのワクチンの位置づけ」に関して考察いたします。

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